デジタル・Webマーケティング戦略立案の流れ・成功ポイントと8つの企業事例
デジタルマーケティング戦略の立て方や、成功のパターンは多様化しています。自社に合わない戦略を選んでしまうなどの失敗を避けるには、どのような点に注意する必要があるのでしょうか。
この記事ではさまざまな企業の成功事例を参考に、デジタルマーケティング戦略の立て方や、成功するためのコツを解説します。
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1.デジタルマーケティング戦略の重要性
デジタルマーケティング戦略を綿密に計画することの重要性は、かつてなく高まっています。
デジタルマーケティングは今や、インターネット上だけの問題ではありません。デジタルマーケティングとは、SNSやWebサイトなどのオンラインにとどまらない「デジタルを駆使したマーケティング戦略全般」です。例えば実店舗とオンラインショップの連携にモバイルアプリを活用するなど、リアルを含むさまざまな戦略が含まれます。
またSNSやスマートフォンなどの普及により、顧客がインターネットやデジタル技術を利用する場面が増加しています。さらに新型コロナウイルス感染症による影響で、消費者の購買行動や、企業活動のデジタルシフトが加速したことも、デジタルマーケティングの重要性を高めました。
デジタルマーケティングは今や、マーケティングの「主戦場」なのです。
2.デジタルマーケティング戦略の主な種類
自社の状況や強みにマッチした戦略を立てるには、デジタルマーケティング戦略の「種類」を把握することが必要です。成功事例を確認する際にも、戦略の種類を知っておくことが役立ちます。
例として挙げられるのは、以下の6種類の戦略です。
- Webサイトの運営
- デジタル広告の配信
- アプリマーケティング
- Eメールマーケティング
- SNSマーケティング
- 動画マーケティング
「Webサイトの運営」には、コーポレートサイトやECサイト、オウンドメディアなど、さまざまな種類のWebサイトによるマーケティングが含まれます。
「デジタル広告」にもいくつかの種類があり、検索エンジンや他社メディア、モバイルアプリ、デジタルサイネージ広告など、掲載する場所もさまざまです。
「アプリマーケティング」とは、モバイルアプリを使った戦略のこと。特に実店舗とオンラインショップを連携するなど、リアルとオンラインを連携する際に重要な戦略です。
「Eメール」によるマーケティングはインターネットの初期からありますが、デジタルシフトが進んだ今でも多くの企業が活用している手法です。
「SNS」は、今やマーケティング戦略の中心になることも多くあります。SNSの種類も増えているため、自社の特性やビジネス戦略に合ったものを選択することが重要です。
「動画マーケティング」は、YouTubeなどで動画を配信する手法を指します。文章を読む習慣が少なく、動画コンテンツに触れることが多い層への接点として重要な手法です。
このようにいくつかあるチャネルや手法のなかから、自社にとって最適な組み合わせや比重を計画することが、デジタルマーケティング戦略の成功を左右するといえます。
3.デジタルマーケティング戦略の事例8選
実際の企業がどのような戦略で成功しているかを知ることは、自社のデジタルマーケティング戦略を立てる際に役立つ情報です。お手本として参考にできる、8つの事例を見ていきましょう。
3-1.富士通
富士通は、社内向けのイントラサイトを改善することで、営業効率アップを実現した事例です。
マーケティングというと「社外向けのコンテンツ」に注目しがちかもしれませんが、富士通は社内向けのコンテンツを改善することで営業力の強化を図り、マーケティング力の向上に成功しています。
富士通は家電・ソフトウェア・セキュリティサービスなど商材の種類が多く、営業担当者が利用する販促用の資料などが膨大で利用しにくい状況でしたが、イントラサイトのリニューアルによって改善。必要な情報を見つけやすいサイト設計に改善した結果、営業担当者が必要なコンテンツにアクセスしやすくなり、営業プロセスの効率化を実現しています。
イントラサイトに「パーソナライズ機能」を搭載して、トップに表示するコンテンツを、ユーザーごとに変えている点もポイントです。ユーザーの属性や行動履歴に合わせて最適なコンテンツを表示するという手法は、社外向けのオウンドメディア運用などでも活用できます。
3-2.高島屋
髙島屋はショールーミング戦略の参考になる事例です。ショールーミングとは、オンラインショップの利用者が、実店舗を「ショールーム」のように実際の商品を見て触れるために利用すること。この消費者行動に合わせて、ショールーミングしやすい仕組みをどのように構築するかが、実店舗のマーケティングにおける課題といえます。
そのための戦略として知られているのが「ショールーム型の店舗」です。ショールーム型の店舗とは、その場では商品を販売せず、商品やブランドを紹介することに特化した店舗のこと。利用者は買うかどうかをその場で決めなくてよいため、気軽に店舗に足を運びやすい点がメリットです。店舗側は、販売による収益ではなく「家賃収入」のような形で、D2C(Direct to Consumer)ブランドに場所を提供する対価が得られます。
高島屋では、2022年4月にショールーム型の店舗を開店しました。さまざまなD2Cブランドを誘致し、商品を展示してブランドのストーリーなどを紹介しています。来店者はショップ店員からの説明を聞きながら購入を検討でき、タブレット端末からオンラインショップにアクセスすることも可能です。実店舗をいわば「メディア」の一種として、購入を検討する情報を得る手段として提供しています。
3-3.セブン‐イレブン・ジャパン
セブン‐イレブン・ジャパンは、SNSと動画によるマーケティングの事例として参考になります。
SNSでは「共感されやすいコンテンツ」や「ストーリー性のある投稿」などが注目されやすいとされています。SNSに適したコンテンツは、テレビCMや広告向けのコンテンツとは傾向が異なるため、従来とは違った戦略を考える必要があるでしょう。
セブン‐イレブン・ジャパンはSNSでの投稿内容を工夫し、宣伝色の強いプッシュ型ではなく、商品開発の苦労話や、商品を擬人化した動画などの投稿にシフト。タイアップ店舗の店主インタビューなど、興味を引くさまざまなコンテンツを投稿し、高いエンゲージメント率を得ることに成功しています。
3-4.無印良品
無印良品は、Instagramと公式モバイルアプリによるマーケティングの成功事例です。
「日経デジタルマーケティング」が実施した調査では、デジタルメディアがきっかけで商品やサービスの購入に至るユーザーが多いブランドとして、1位に無印良品が挙げられています。
1位になった要因の1つは、Instagramアカウントの投稿内容の工夫です。宣伝色を避けつつ魅力的な商品写真を投稿して、高いエンゲージメント率を達成しています。
もう1つの要因は、モバイルアプリです。公式モバイルアプリ上でフォロー(お気に入り登録)した店舗からの情報が届く「from MUJI」の機能を導入し、アプリの利用頻度アップと、効率的な集客を実現しています。
3-5.パナソニック
パナソニックは、複数のInstagramアカウントを運用して成功している事例です。
Instagramは、アカウントごとの統一感や世界観の設計が重要なSNSです。パナソニックのように複数の商品ラインがある場合、複数のアカウントに分けて運用することで効果を発揮する場合があります。
パナソニックでは、全般的な情報を扱う「パナソニック公式」とは別に、キッチン家電がメインの「Panasonic Cooking」、美容家電の「Panasonic Beauty」など、複数のInstagramアカウントを運用しています。
キッチン家電のアカウントでは、モデルの家族が家電を使っている様子の動画を投稿して、製品の利用シーンや使い方を分かりやすく自然な形で発信。その結果、ターゲット層から効果的にフォローを集めることに成功しています。
3-6.ワークマン
ワークマンは、「企業アンバサダー」によるマーケティングの成功事例です。
企業アンバサダーとは、自社の商品・サービスやブランドに強いこだわりや関心を持っているユーザーのこと。企業アンバサダーと協力して商品宣伝をする「アンバサダーマーケティング」は、信頼性の高い口コミにつながることから、多くの企業に注目されています。
ワークマンでは、さまざまな立場のユーザーから企業アンバサダーを選定し、商品の紹介や商品開発の場面で協力を得ています。参考になるポイントは、企業アンバサダーに対して金銭による報酬は支払わず、商品サンプルなどの提供のみに限定しているという点です。
金銭的なインセンティブがあると、企業アンバサダーの発信内容に宣伝色が出やすくなり、第三者としての客観的な口コミや意見が出にくくなります。ワークマンでは金銭的な報酬なしでも、質の高い企業アンバサダーを多く集めることに成功しています。
3-7.BEAMS
BEAMSはオムニチャネル化と、SNSによる「顧客との交流」という点で参考になる事例です。
BEAMSでは以前、リアル店舗とECサイトで顧客データを別々に管理していましたが、それを統合することで一貫性のあるサービス提供ができるオムニチャネルを実現。その結果、例えば実店舗で購入した商品が自宅に届くよう手配するなどのサービスを、スムーズに提供できるようになっています。
さらに、SNSを通じて店舗スタッフと顧客が交流できるようにする戦略も導入。各スタッフが公式サイトとSNSにスタイリング写真などを投稿して情報発信し、顧客とのコミュニケーションを促進しています。その結果、多くのファンがいるスタッフも出てきており、顧客とのつながりを強化することに成功しています。
3-8.グロービス経営大学院
グロービス経営大学院は、オウンドメディアによるコンテンツマーケティングの成功事例として参考になります。
「グロービスキャリアノート」というビジネスパーソン向けのオウンドメディアで情報発信し、大学院の認知や興味を拡大する戦略です。
自社サービスに対して「すでに興味を持っている人」だけでなく、「キャリア形成について不安を持っている人」などの潜在層にも積極的にアプローチするコンテンツを配信。例えば「人間力」や「社会人基礎力」など、自社サービスとの直接的な関連がなくてもビジネスパーソンが興味を持ちやすいキーワードで上位表示を目指すという、王道の戦略で成功しています。
リンクの配置などの導線にも配慮し、サービスサイトへと効果的に誘導している点もポイントです。
4.事例から学ぶデジタルマーケティング成功のコツ
デジタルマーケティングを成功させるには、どのような点に注意する必要があるのでしょうか。ここまで紹介してきた事例を参考に、デジタルマーケティング成功の秘訣を考察してみましょう。
4-1.戦略の目的・ターゲットを明確にする
何のための戦略か、そしてどのようなターゲットに重点を置いた戦略かを具体化することが第一歩です。
目的が明確でなければ、例えばWebサイトのアクセスだけが増加して肝心の申込み増加にはつながらないなど、「成果のない戦略」になりかねません。
ターゲットが明確でなければ、適切なチャネルやコンテンツ企画を決めることが難しくなります。一方、ターゲット層が明確なら、「ターゲット層がよく利用するSNS」などのチャネルや、「興味を持ちやすいコンテンツ」を決めやすくなるのです。
パナソニックの事例のように、異なるターゲット層に合わせるために「複数のSNSアカウントを運用する」などの戦略に行きつく場合もあるでしょう。
戦略の目的やターゲット層を決めておくことは、マーケティング計画の全体をスムーズに進めることにつながるのです。
4-2.自社の特徴・強みを生かす
自社の状況や商品・サービスの特徴に合った「優先して取り組むべき項目」に力を入れることも重要です。
優先事項が明確でないと、「Instagramが流行っているから」「同業他社がYouTube配信を始めたから」などの理由だけで、自社に合わない戦略を決めてしまうことになりかねないでしょう。
この記事で紹介した成功事例を参考にして、そのまま同じ戦略を取っても、どのような企業でも成功するとは限りません。紹介した事例は、自社サービスの特徴を把握し、その強みを生かしたからこそ成功したといえます。
事業内容や商品・サービスの特徴、自社の置かれている状況を十分に分析し、「自社が優先すべき項目は何か」を踏まえた戦略を立てることが重要です。
4-3.オムニチャネル化を意識する
複数のチャネルを運用する場合、オムニチャネルを実現することは、デジタルマーケティング戦略を成功させるために不可欠といえます。
オムニチャネルとは、実店舗・ECサイト・モバイルアプリなど複数のチャネルを併用しながら、それらのデータを連携して一貫性のあるサービスを提供するというデジタル戦略です。
オムニチャネルを実現することで、顧客は複数のチャネルを自由に併用しやすくなります。多くの人が日常的に複数のチャネルを併用している現在、オムニチャネルは「あたりまえ」になりつつある戦略です。無印良品やBEAMSの事例からも分かる通り、実店舗のマーケティング戦略としても重要度が高いといえます。
デジタルマーケティング戦略を立てる際には、顧客の利用シーンを具体的にイメージして、「チャネル同士をどのように連携できると便利か」を検討することが重要です。
5.まとめ
デジタルマーケティング戦略の成功パターンは、企業ごとにさまざまです。商品・サービスの特徴やビジネス分野などによって異なり、タイミングや競合他社の動向など、さまざまな要素が関係しています。
自社に合った戦略を立てるには、自社の状況を客観的によく分析して優先事項を見極めて、他社にはない強みを利用することが重要です。
本記事で紹介した事例の戦略が、あらゆる企業に共通する成功戦略とは限りませんが、判断材料の1つとして参考にできます。さまざまな成功パターンを分析することで、自社に合った最適の戦略が見えてくるはずです。
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