CMSの主な種類9選と導入するCMSの選び方を解説
MSにはさまざまな種類があり、Webサイトの規模や求める機能・使い方などによって向いているサービスが異なります。Webサイトの制作・リニューアルにあたっては、自社に合うCMSを厳選して最適なものを活用するのがポイントです。
本記事では、代表的な9種類のCMSの特徴と、導入するCMSの選び方を解説します。
目次
1.Webサイト制作でCMSを利用するメリット
いくつかWebサイトを制作する手段はありますが、CMSの利用では「コンテンツの修正・追加が容易」「複数メンバーでの共同作業がしやすい」という利点が挙げられます。
1-1.コンテンツの修正・追加が容易
CMS導入の最も大きなメリットは、プログラミングの知識がなくても、簡単にWebサイトにコンテンツの追加・修正できるところにあります。
CMSを利用せずにWebサイトを作成しようとすると、複数のプログラミング言語を用いて、完成形のWebページを1ページずつ作成しなければなりません。専門的な知識がなければ、更新する度にWeb制作会社に依頼する必要があります。
一方で、CMSを用いる場合、インターフェイス上で編集すれば、Webサイトが更新されます。専門知識がなくても、直感的にコンテンツの追加・修正ができることから、インハウスでの対応も可能です。さらに、実績のあるオープンソース型やSaaS(クラウド)型のCMSであれば、制作会社に依頼する場合でも一般的に必要とされる機能があらかじめ組み込まれていることも多く、作業工数を削減できるため、開発コストの削減にも効果的です。
1-2.複数メンバーでの共同作業がしやすい
CMSは複数ユーザーが同時に使用できるため、共同作業がしやすく、より効率的にWeb制作を行うことができます。
会社によっては、コンテンツの構成や内容を考える部署がページごとに異なることもあるでしょう。この場合、各部署からWeb運用担当者に依頼をして、Web運用担当者が外注を行い、さらに各部署に戻すことを繰り返すという煩雑な運用フローになってしまいます。
一方で、CMSを用いることで、複数ユーザーが同時にアクセスできるため、各部署の担当者や外注先が直接Webサイトの確認や編集を行うことが可能です。ユーザーごとにアクセス権限を付与できるCMSを導入すれば、Web運用担当者のみが触りたい機能やページは他部署のメンバーが変更できない設定にすることもできます。
2.CMSの種類とそれぞれの特徴
Webサイト制作を検討しているのであれば、CMSの種類の違いや特徴が気になるでしょう。CMSは大きく分けると、「オンプレミス型」と「SaaS型」の2種類が存在します。ここでは、それぞれの特徴と、種類を選定する際に重要なポイントも紹介します。
2-1.オンプレミス型
オンプレミス型のCMSは、サーバーにデプロイ(設置)して使用します。利用するためには、CMSソフトウェアを購入するほか、自社サーバーまたはクラウドサーバー、レンタルサーバーを用意する必要があります。
オンプレミス型のCMSは、ベンダーが販売している「パッケージ型」と、インターネット上で公開されている「オープンソース型」の2種類があります。パッケージ型は有料ということもあり、機能やサポートが充実しているのが特徴です。他方で、オープンソース型は無料なので導入費用を抑えられますが、セキュリティ面の不安からサービス選びが重要となります。
オンプレミス型のCMSを利用する主なメリットは、自社のインフラ環境内で開発・運用を行うため、ネットワーク設計やパフォーマンスなどをきめ細かく管理・カスタマイズしやすいということが挙げられます。またセキュリティも、CMS提供会社に依存せず自社内環境でシステムを構築・設置するため、管理が可能です。例えば、リモートワークが増えるなか、「VPN(仮想ネットワーク)を構築して限られた端末からしかアクセスできないようにする」といった設定も可能です。
一方、オンプレミス型のCMSのデメリットは、自社でシステム環境を管理する分、工数・費用といったリソースがかかる点が挙げられます。
2-2. SaaS型
SaaS型のCMSは、事業者側が提供しているサーバー・CMSをインターネットを介して使用します。利用者側はサーバーを別途用意する必要がないのでサーバーの導入・管理にかかるコストを削減できるうえ、オンライン環境があれば場所や端末を問わず制作・編集をすることができます。
無料で利用できるタイプもありますが、広告が表示されたり独自ドメインにできなかったりと、制約があるのが一般的です。独自ドメインのWebサイトを作る場合は、基本的に有料のサービスを使うことになります。
SaaS型のCMSを利用する主なメリットは、システムを自社で設置・運用する必要がないため、オンプレミス型と比較して開発の工数や費用がかからないという点です。また、事業者によってカスタマイズ・セキュリティ・サイト運用に関してさまざまな機能・サービスを提供しており、選択するサービスによってはそれなりに細かい設定を行うこともできます。
一方、SaaS型のCMSは、あくまでも事業者側のシステム環境に依存するため、柔軟な開発・運用を行うには向いていない場合があります。
3.オンプレミス型CMS
ここでは人気のオンプレミス型CMSを5種類紹介します。
- WordPress(ワードプレス)
- Drupal(ドルーパル)
- Joomla!(ジュームラ)
- EC-CUBE(イーシーキューブ)
- Movable Type(ムーバブルタイプ)
1つずつ特徴や採用されているシーンについても触れていきます。
3-1.WordPress(ワードプレス)
WordPressは、全世界で使われている代表的なオープンソース型CMSです。Web上のサイトの4分の1は、WordPressで制作されているほど大きなシェアを持っています。
ここまで人気になっている理由としては、無料で配布されていることに加え、プログラミングの知識がなくてもWebサイトを簡単に制作・編集できるところにあります。シンプルな管理画面で、文章や画像の挿入が感覚的に行えるうえ、簡単なデザインや装飾、公開もノーコードで完了します。また、「プラグイン」という追加機能が豊富に公開されており、さらにプログラミングの専門知識があれば、機能やデザインのカスタマイズも可能です。
3-2.Drupal(ドルーパル)
Drupalも、世界的なオープンソース型CMSです。NASAやEU、グラミー賞など政府系・グローバル企業が多く採用しており、大規模Webサイトの30サイトに1つはDrupalで制作されています。
Drupalは、ニーズに合わせた細かいサイト構築や、ユーザー別の権限管理など柔軟性・拡張性が高いことから、無料のCMSのなかでも高度なカスタマイズが可能です。そのため、エンタープライズ市場向けのハイエンドCMSといわれています。
3-3.Joomla!(ジュームラ)
Joomla!は、日本での認知度はまだ低いものの、海外では人気が高まっているオープンソース型CMSです。現在、3,000以上の政府関連サイトがJoomla!を使って制作されているとされています。
Joomla!は、WordPressよりもプログラミング言語の知識がなくてもできることが多く、自由度の高さが特徴です。機能も多いため、特に階層が多く複雑な構成となる、中規模・大規模のエンタープライズサイトに強いCMSといえます。ただし、日本での採用がまだ少ないため、開発や拡張機能の情報も英語表記が多い点には注意が必要です。
3-4.EC-CUBE(イーシーキューブ)
EC-CUBEは、株式会社イーシーキューブによるオープンソース型CMSです。ECサイト向けで、ダウンロード数180万件超・推定稼働店舗数3万5,000店超と、月商1,000万円以上のネットショップで利用されているカートシステムのなかでは利用数No.1を獲得しています。
オープンソースながら開発・運営元がはっきりしており、日本製なので日本語の情報公開とサポートを受けられる安心感が魅力です。無料で利用できるのはパッケージ型ですが、有料のSaaS(クラウド)型も選択できます。
3-5.Movable Type(ムーバブルタイプ)
Movable Typeは、アメリカのシックス・アパート社によるパッケージ型CMSです。大企業・官公庁・教育機関などの大規模サイトで多く採用されており、日本では日経平均株価構成銘柄の約5割、東証プライム企業の3割、国立大学の8割がMovable Typeを使ってサイトを制作しています。
静的サイトと動的サイトの両方を制作できる点が大きな特徴です。加えて、オープンソースでないうえ、提供されているプラグインも公式または動作検証されており、セキュリティ面の信頼性が高いことも支持を集めている理由です。
4.SaaS型CMS
続いて、人気のSaaS型CMSを4種類紹介します。
- Adobe Experience Manager
- Sitecore Experience Cloud
- ShareWith
- Connecty CMS on Demand
特徴や採用されているシーンについて確認します。
4-1.Adobe Experience Manager
Adobe Experience Manager(AEM)は、デジタルコンテンツを作成・活用する世界トップクラスのソフトウェア会社であるAdobe社が提供するCMSです。
Adobe自体は、AEMをCMSとして位置付けておらず、ユーザー体験をトータルで向上させるツールとしています。実際に、一般的なCMSにはない高度な機能が搭載されている点が特徴です。例えば、AIによる画像識別・自動タグ付けや、設定されたペルソナに合わせたページの出し分けなどが行えます。大量のコンテンツを素早く作りたいという大手企業向けのツールといえるでしょう。
4-2.Sitecore Experience Cloud
Sitecore Experience Cloudは、デンマーク発のSITECORE社が提供するCMSです。大手グローバル企業を中心に、5,200社以上の企業や団体で採用されています。
特に、マーケティングに強い点が魅力で、デジタルマーケティング機能が搭載されているため自社サイトのデータ分析や最適化に効果的です。また、細かくアクセス権限を設定できることから、セキュリティの高さにも定評があります。
4-3.ShareWith
ShareWithは、野村ホールディングス株式会社の100%子会社である野村インベスター・リレーションズ株式会社が提供する日本製のCMSです。株式会社DataSign「DataSign Report 上場企業 CMS調査 2022年8月版」によると、上場企業が採用しているクラウド(SaaS)
型CMSとして導入数がNo1となりました。
CMS・サーバー・サポートが一体になっている点が大きな特徴で、コーポレートサイトの運営に特化しています。
4-4.Connecty CMS on Demand
Connecty CMS on Demandは、株式会社コネクティが提供する大企業向けに開発された日本製のエンタープライズCMSです。
サイト運用やデジタルマーケティング、無償バージョンアップなどWebサイト構築後の運用業務のサポートが充実しています。そのほか、動的サイトと静的サイトの両方を作成できる点も特徴です。
5.導入するCMSの選び方・チェックポイント
上でご紹介したようにCMSにはさまざまな種類があり、自社に最適なものを選ぶには、各CMSの特徴を慎重に見極める必要があります。導入にあたってチェックすべき主なポイントは以下の5つです。
- 拡張性・連携チャネル
- 多言語対応
- ユーザビリティ
- セキュリティ
- サポート体制
5-1.拡張性・連携チャネル
拡張性と連携チャネルは、最初に確認しておきたいポイントです。拡張性とは、標準的な機能に加え、後から付加的な機能の追加や性能の向上を行うための余地・容易さを指します。
多くの企業で、Webサイトを制作してから時間が経てば、事業規模やWebサイトの用途、連携するチャネル・外部システムが変わってきます。変化に伴って、Webサイトの規模やCMSに求められる機能にも大幅な変更が求められるため、導入時から拡張性があり、連携チャネルの多いCMSを導入しておくとよいでしょう。
5-2.多言語対応
「すでにグローバル展開している」「将来的に海外に進出したい」という企業であれば、多言語に対応できるCMSが便利です。今は日本語以外の言語に対応する必要はなくても、いつ何時、他の言語に対応しなければならないシーンが来るかわかりません。
複数言語をサポートするCMSを選択する場合は、対象言語のサポートの有無や、新たな言語を追加する際に必要な時間・コストを確認しましょう。
5-3.ユーザビリティ
導入するCMSは、ユーザビリティが高く、多くの人にとって操作しやすいことが推奨されます。
中堅・大手企業のWebサイト制作・運営では、自社内の社員やWeb制作会社、外部の制作パートナーなど、多くの関係者が管理や更新のためにサイトを操作します。ユーザビリティが悪ければ、サイト更新の業務負担が大きくなったり、コンテンツの掲載までにタイムラグが発生したりとさまざまなリスクや問題が予想されます。
5-4.セキュリティ
Webサイトのセキュリティは、ユーザーからの企業への信頼にも大きく影響します。そのため、CMSの種類を検討する際には、セキュリティを重視して選定する必要があります。特に、大規模サイトやグローバル展開しているサイトでは、ユーザーや関係者も多くなることから、不正アクセスやサイバー攻撃などのトラブルが起こると被害が拡大しやすいので注意が必要です。
5-5.サポート体制
CMSの機能だけでなく、提供元あるいはベンダーのサポート体制も要確認です。サポート体制に関連するポイントとしては、サポート内容や対応言語、料金、問い合わせ方法、対応時間、レスポンスの速度などが挙げられます。
中堅・大手企業においてWebサイトを制作・運用する際は、求める機能要件が多かったり、大規模サイトや多言語対応サイトだったりと複雑になる傾向があるため、一般的にはサポート面が充実しているほうが推奨されます。
6.CMSを活用する場合でもWeb制作会社のサポートは必要か
「専門的知識がなくてもWebサイトが制作・運営できる」という点が、CMSを利用するメリットでした。そのため、Webサイト制作に際して、インハウスで対応するのかWeb制作会社に依頼するのか迷っているケースもあるでしょう。
最後は、「CMSを活用する場合に、Web制作会社のサポートは必要なのか」という点について、考慮しておくべきポイントを紹介します。
6-1.Webサイト立ち上げ時には専門知識が必要
CMSを用いれば、専門知識がなくてもWebサイトの構築・更新作業は可能です。しかし、CMSを利用したとしても、サイトの立ち上げ時には専門知識が求められる場面があります。
例えば、自社サイトに合わせたデザインやサイト構造の設計、セキュリティ設定を行うためには、マークアップ言語やプログラミング言語によるカスタマイズが必要になってきます。そこで、Webサイトの立ち上げを予定しているのであれば、導入するCMSの種類を選定する前に専門家のサポートを受けることが推奨されます。
6-2.効果を高めるには戦略面でのサポートも必要
Webサイトの効果を高めるためには、Web戦略の策定が欠かせません。戦略策定ノウハウも持つWeb制作会社に依頼することで、完成度の高いWebサイトを作成できるだけでなく、プロの持つ戦略面の知見を活用できます。
Webサイトは、企業の認知度向上やブランディング、リード・顧客獲得、人材採用、カスタマーサポートなど、さまざまな目的のために存在します。Webサイト制作会社に依頼することで、集客効果やコンバージョン率を向上させる施策などについての提案も受けられ、Webサイトのパフォーマンス最大化をスムーズに実現できる可能性があります。
マーケティングに強いWebサイト制作会社を選ぶメリットと5つの施策例
7.まとめ
本記事では、CMSの種類と選び方について詳しく解説しました。CMSを用いれば、プログラミングの専門知識を持たない人でも、Webサイトの制作や運営が可能です。ただし、本格的なWebサイトを立ち上げるためには、専門知識やスキルが求められるシーンが少なからず発生します。
特に、中堅・大手企業の場合、多階層・多言語の大規模サイトになることが多く、サイト立ち上げ時からリニューアルや機能の拡張を見据えておかなければ、サイト運営やメンテナンスの負担が大きくなることが予想されます。Webサイト制作・運用にあたっては、CMSを活用する場合でも、専門的な知見を持つWeb制作会社に依頼することで工数の最適化、品質やパフォーマンスの最大化につながりやすくなる可能性があります。