ケーススタディ
ユーザー視点に立ち、「今あるべき出版社のWebコミュニケーション」を具現化するコーポレートサイトを構築
- 社名
- 株式会社誠文堂新光社
- 業種
- 出版
- サイトURL
- https://www.seibundo-shinkosha.net/
- サイト公開日
- 2019年
- プロジェクトメンバー
- プロデューサー:石川、プロジェクトマネージャー:中村、ディレクター:林、アートディレクター・デザイナー:永見、システム:木村
誠文堂新光社は創立100年を超える出版社。1912年創業の「誠文堂」が1916年設立の「新光社」を1935年に合併して、現社名となりました。
理工学から人文科学、農園芸、デザイン、児童、教育、趣味、娯楽、ペット、各種実用分野まで扱うジャンルは幅広く専門的。また、出版以外の事業も古くから手掛け、現在はイベント、セミナー、ECビジネスなどへ領域を拡大しています。
クライマークスは、同社コーポレートサイトのリニューアルを担当しました。
プロジェクトの背景/課題
いかにWebストアと差別化を図り、企業像を示せるか
これまで誠文堂新光社では実店舗販売をメインとしつつ、コーポレートサイトでも書籍を販売していました。しかし、商品ページへのアクセスが悪いことなどからAmazon、hontoといったWebストアに販売の軸足を移すことにしました。
そこで問題となったのが、コーポレートサイトにどんな情報を掲載し、どんな機能を持たせるかです。
コーポレートサイトのメインターゲットは、あくまで書籍購入を目的とする一般消費者。しかし、単に書籍情報を提供するだけであればWebストアとの差別化が図れません。
一方、コーポレートサイトとしての課題もありました。もともと書籍販売に注力していたためコーポレートサイトにおける企業紹介要素は弱め。老舗出版社であるだけでなく時代のニーズをとらえる「進取の気性」に富む社風や、出版以外にも事業を広げているビジネスの全体像を訴求できていないことが課題でした。
こうした課題を払拭するため、同社はコーポレートサイトのリニューアルを計画。担当企業を選ぶ4社コンペが行われました。
コンペに参加したクライマークスは、日本の出版社のコーポレートサイトを調査。それをもとにWebトレンドなども踏まえながら、「今あるべき出版社のWebコミュニケーション」を提示しました。そのうえでWebストアとの住み分けなど具体的な施策を提案。この結果、同社のコーポレートサイトリニューアルを担当することになりました。
課題解決のためのアプローチ
ターゲット像を明確にしたうえでテーマを設定、施策で具現化
1.テーマ
提案後、「今あるべき出版社のWebコミュニケーション」を具現化すべく、ペルソナとカスタマージャーニーを用いて改めてユーザー像を考察。以下のような見解を得ました。
- メインターゲットとなる書籍購入予定ユーザーは趣味性が強く、自分なりの価値観をしっかり持っている層と判断
- そのため、出版社のコーポレートサイトで多く提示されている(出版社ゆえの)崇高な理念や、情緒的なコピーなどへの興味は特に希薄と想定
- 書籍情報を得ることがサイト来訪の主目的であるため、商品ページの情報はユニークかつ多い方がよい
- しかし、単純に商品ページへ誘導するサイトでは企業像訴求は困難。Webストアとの差別化も図れない
これをもとに、ユーザーの書籍情報取得を邪魔することなく「誠文堂新光社とはどんな出版社か」をさりげなく気付かせるサイトの構築をテーマとしました。
2.トップページ
キービジュアルでは誠文堂新光社らしさを、出版社らしく言葉で表現。しかし、大上段の企業理念やエモーショナルな表現、あるいは言葉を尽くした説明はNGとしました。
作成にあたっては本好きのプロデューサーが誠文堂新光社と協議し、簡潔でさりげない言い回しを模索。決定したキャッチコピーは、「あなたの「好き」を、もっと深いところまで。そんな思いで100年。」。「好きに出会える」「好きを深められる」書籍を出版する企業像を訴求するとともに、ユーザー自身が「深い趣味を持っていてよかった」と思わせるものとなりました。
合わせて、キービジュアルではこれまで発行してきた実際の書籍を年表形式で紹介。一貫して趣味性の高い書籍を出版してきた企業姿勢が、一目でわかるようになっています。
出版社に多いキービジュアルでのバナーはNGとし、サムネイルを置くのも抑制、企業像のみを訴求しています。代わりに、キービジュアル配下では新刊・近刊情報、トピックスはもちろん、ジャンルによる検索が可能となっています。
また、グッズ、イベントなど出版以外の事業もグローバルナビに配置。検索しようとしたユーザーが多様な事業展開に気付けるようになっています。
3.デザイン
デザインコンセプトは、Webの特性や時代性、老舗出版社イメージの払拭、他出版社との差別化などを考え、「フレッシュ」「モダン」「絵で伝わる」としました。
具体的には、トップページや全体のカラーリングはフラットかつ新鮮な印象のあるキーカラー+白で表現。趣味性の強い指向の異なるさまざまなユーザーが訪問するサイトとして、特定ジャンルのイメージがつかないように配慮しています。
また、出版社のコーポレートサイトとして「しおり」をデザインエレメントに活用、本好きへさりげないアピールを行っています。
4.商品詳細ページ
Webストアにないユニーク情報として、編集者の想いや完成までのプロセスを開示する「ここだけの話」、あるいは編集者、担当者のリコメンドである「今日の1冊」などを掲載。他ジャンルへの遷移も簡単です。
これによりユーザーはより深い書籍情報を取得できるだけでなく、新しいジャンルへ読書経験を広げることが可能。そして、編集者、担当者といった「人」を通して、また編集過程などからも、企業としてのこだわりや価値観を無理なく理解できます。
5.その他
トップページで使用した過去の出版物の撮影もクライマークスで実施。CMSもオフショア構築することでコストを軽減しています。
成果
リニューアル後、定量的/定性的に大きな成果を挙げる
リニューアルの成果は以下の通りです(リニューアル直前2カ月間と最近(2021年6~8月)のデータを比較)。
1.集客
全体的に向上。特に商品詳細ページは「ここだけの話」「今日の1冊」などを追加した影響か、平均ページ滞在時間やランディングページが増加(さまざまなデザイン参考サイトに実績をリンクしているものの、Referral自体が大きく増えているわけではないため、純粋にコーポレートサイト来訪ユーザーが増加と判断)。
2.ページビュー
39.38%向上
3.ユーザー数
121.43%向上
4.商品詳細ページ・ページ別滞在時間
00:00:54→00:01:34
5.商品詳細ページ・ランディングページ
305%向上
6.デバイス別ユーザー数
Mobile:197%向上 Desktop:83%向上
7.その他
Twitterからの流入がリニューアル後から増加
コーポレートサイトのキービジュアルとキャッチコピーは、誠文堂新光社社屋にも掲示されています。「企業像を明確に示す」という要望に応えた結果と言えるでしょう。
クライマークスとしても、時代背景を含めてあるべき姿を示した提案や、テーマをいかに実現していくかをユーザー体験に沿って落とし込んだサイト構築は貴重な経験となり、その後の提案に活かされています。
ブランディング
Webサイト制作・構築を通じて、さまざまな領域のブランディングを手掛けてきた実績を活かし、お客さまのブランディングを推進します。
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